ブレインステップ7|視床:感覚をつなぐ“脳の交差点”
視床(Thalamus)は、私たちの五感――視覚・聴覚・触覚・味覚・温度感覚など――から入ってくるすべての情報を、まず最初に集約・整理し、大脳皮質に送り届ける「感覚のハブ中枢」です。
脳の“交通整理係”であり、“交差点”であり、“ハブ空港”のような存在。私たちが世界を正しく「感じ」「認識し」「反応する」ためには、この視床の働きが不可欠です。
嗅覚を除くすべての感覚刺激は、視床を通ってからでないと大脳で意味づけされることはありません。つまり、視床が整ってはじめて「感覚統合」が成立し、脳の“知覚地図”が描かれるのです。
しかし、この視床の働きが未発達だったり、過敏や鈍麻といったバランスの乱れがあると…
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外界の刺激(音、光、触れられることなど)に対して過剰に反応してしまう
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逆に、感覚刺激に気づきにくく、**“ぼーっとしてる”“反応が鈍い”**と見られる
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感覚のズレからくる落ち着きのなさ・姿勢の不安定・注意力の散漫さなどが起こる
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感覚と行動の“橋渡し”がうまくいかず、ちぐはぐな動きや感情の不安定さが見られる
といった“感じること”にまつわる不具合が日常に現れてきます。
つまり視床の安定は、「感覚過敏」「感覚鈍麻」「感情の揺れ」「集中力のムラ」「姿勢の崩れ」など、発達特性の背景にある根本的な課題の土台です。
視床を整えることは、単に刺激に強くなるというだけでなく、「ちょうどよく感じる身体」=「自分の感覚とつながった安心できる身体」を取り戻すということなのです。
発達支援においては、「皮膚感覚・前庭刺激・呼吸・姿勢・運動」などを通じて、視床を安定させる介入がとても重要になります。感覚を遮断するのではなく、整理し、受け取り、統合する力を高めていきましょう。